ロワール地方のソミュール近くのル・ピュイ・ノートルダムの村に2014年にやってきたチボー・ステファン。ブルターニュ生まれの彼は、都市計画を学ぶ研修生だった20歳の時、初めてヴァン・ナチュールを飲んで感銘を受けます。それがワイン生産者になるきっかけでした。

まずは醸造を学び、アルディッシュで研修をし色々な出会いがある中、ワインもたくさん試してきました。そして個性豊かなシュナン・ブランに興味をもったのでした。シュナンといえばロワールです。早速行動を起こしたチボーは、ロワールで研修を重ねます。ロワールワインの第一人者クロ・ルジャールのナディ・フーコーを師と仰ぐソミュールのドメーヌ・ギベルトーのロマンの下でも2年間研鑽を積みました。

そして2014年、このル・ピュイ・ノートルダムに移ってきます。1998年からビオ栽培をしている畑を見つけたからです。2014~15年の頃はまだ、畑を比較的手頃な価格価格で手放すという農家もあったといいます。2014年から2017年の間に近辺に6人、彼と同世代で同じように小規模な畑でワイン造りをする新しい生産者が入植しています。このグループの先陣を切ったのが2012年にドメーヌを立ち上げたフランソワ・サン・ロ。みんなで情報や意見交換をしたり、プレス機などの農機具も共同で使うなど、協力し合ってワイン造りをしています。

現在、3.6ha(今年もう少し増やす予定)の畑は、フレッシュさや生き生きした白ワインを造るためのシュナン・ブランを植える石灰質の土壌とカベルネ・フランを植える石英の混じった粘土質土壌にあります。石英の土壌でできたカベルネ・フランはしっかり熟すまで収穫を待ち、浸漬時間を短くして、軽やかでいて青臭さのない赤を造るようにしているといいます。

左の写真は剪定中の2月のカベルネフランの畑。もちろん、農薬や除草剤は一切使いません。選定や収穫も全て手作業です。ナチュールの畑らしく生き生きした下草もたっぷり。保水や吸水、ぶどうの根に栄養を与える等々、元気に役目を果たしています。

カーヴでは通常、白も赤も樹脂製のキューヴで発酵、その後樽に移し、地下にある熟成用のカーヴで熟成させています。ただ、2019年に関しては、シュナン・ブランは霜の被害で生産量が少なかった為、樽発酵をしました。カベルネ・フランは除梗をして3週間以上マセラシオンをし、12月から12か月間樽熟成をします。クロ・ルジャールの流れをくむ師匠ギベルトーの影響もあってか、醸造スタイルはクラシカル。

チボーいわく「赤ワインは、最近、マセラシオンを短くしたり、マセラシオン・カルボニックを取り入れる傾向があるけど、テロワールの特徴が分かりにくくなるから、僕はそれはしないんだ」

ロワール河沿いにはどの町にもシャトーが建っているのですが、ソミュールには築城の為に石灰岩の採石をした跡の洞窟が点在しています。温度や湿度がワインの熟成にはぴったりということで、古くからワインの熟成庫として使われてきました。チボーの借りているカーヴもそんな洞窟のひとつ。広い広いカーヴにパラパラと樽が並んでいます。

2020年には少し畑を増やし、古木のシュナン・ブランの区画は植え替えをする予定のチボー。新人ながらクリアでまっすぐ、旨味たっぷりのワインスタイルは素晴らしく、感動的ですらあります。

とはいえ、まだまだ進化中、もっともっと上を目指して自分スタイルを確立したいチボー。これからが楽しみな生産者がまた一人増えました!